税務調査なんて怖くない⑧

 最近は女性の税務署員が調査に来ることも珍しくなくなった。都内の電子機器設計会社に上席(係長クラス)の女性調査官が1人で来た。

 1日目の午後と2日目の午前中は総勘定元帳と原始証憑をひたすらチェックし、ペタペタと付箋を貼っていた。
 2日目の昼食後、社長と私に調査結果の説明を始めた。仕事は早い。

「よく処理されていますね。ほとんど指摘するところはありませんが、この大学の同窓会の会費と二次会の費用は社長さんが個人で出すべきものではないでしょうか?」

 それは私も決算時に気が付いて社長に確認していたので反論した。

「大学時代の同窓生の方が定年を過ぎたので、アルバイトや外注として働いてもらうためのリクルートの為に参加されたのです。実際2人の方にそのあと外注として仕事を依頼しています」

 何度も説明したが、女性調査官は頑として引かなかった。同窓会費1万円、二次会は数人分を社長1人で支払っているから3万円の計4万円である。納得いかなかったが、少額なので社長も折れてくれた。それと契約書の印紙の貼り漏れが1万円。この女性調査官は細かかった。

 総額で5万円が否認され、追徴税額は2万円くらいだった。しかし、交際費は社長の報酬になったため、年末調整のやり直しと源泉所得税、交際費分の法人税と消費税、さらに印紙税の追徴納付のため4税目を修正した。

(プチ解説)

 たぶん、交際費の中から個人が負担するものを探すのがこの女性調査官の得意技なのでしょう。少額なので相手に認めさせやすいけれども、法人税、所得税、消費税の3税目を修正するので調査のポイントもあがるのでしょう。
 中学生の息子さんがいるそうですが、将来は税務署に入れるそうです。(財務省のキャリアを狙っているのかも?)ちなみにご主人は国税局に勤務しているそうです。見事な親子承継、すごい税務一家です。

執筆者紹介 

【名前】
野口 義幸(のぐち よしゆき) 

【取得資格等】
事業承継士、中小企業診断士、1級ファイナンシャルプランニング技能士  

【自己紹介】
大手流通企業2社で、販売促進、営業、経営企画室長、総務課長を歴任。また、マネジメントゲームとパソコンを活用したセミナーの講師として延べ2,000人以上の経営管理者教育を実施。現在は都内の会計事務所に所属し、財務会計指導を中心に法人の経営コンサルティング、個人のライフプランニング等を行っている。また、ジャズドラマーとして定期的に都内のライブハウスに出演している。 


現場における事業者様への支援については、様々な進め方があります。

このブログでは個々の会員の体験に基づいたお話をお伝えしております。