税務調査なんて怖くない⑨

 令和2年は新型コロナウィルスの影響で税務調査は来ないと思っていたのだが、10月の中旬に電話が入った。万全の感染防止対策をして行くので何とかお願いできないか、と非常に低姿勢だった。

 4~5年に1度の定期循環調査だから先延ばしにしても仕方ないので、11月中旬の2日間日程を空けた。やってきたのは統括調査官と若い調査官。若い調査官に聞いてみると、今年の4月に入職したそうである。通常なら1年間税務大学で研修を受けてから配属になるのであるが、今年は新型コロナウィルスの影響で3カ月のZOOM研修を受けただけで配属されたそうだ。調査にもなかなか行けず、今回がどうやらデビュー戦らしい。

 新人「あの~、何をやればいいでしょうか?」
 統括「じゃあ、外注費の請求書と元帳をチェックして」
 新人は外注費の請求書綴りをめくって眺めている。
 統括「眺めているだけじゃなくて、抜き書きした方がいいんじゃないか?」

 新人は便箋に抜き書きを始める。

 統括「あのさあ、最初のページからじゃなく、決算日前後の大きなところから抜き出した方が効率的だと思うよ」

 そばに私がいるためか、パワハラやモラハラを意識しているのか、言葉は優しいが苛立っているのがわかる。
 新人はオロオロしながら請求書綴りをめくっている。

 私「あのね、決算日をまたいで、前倒しをしたものがないか、先延ばしをしたものがないかを調べるんだよ」
 (何で私が税務署員に調査のやり方を教えてあげなきゃならないんだ?)
 新人「そうなんですね、ありがとうございます」
 私「いま公務員は人気があるから入るの大変だったでしょ?」
 統括「そうなのか? たいへんだったか?」
 新人「税務署は筆記重視だったから受かりました。市役所は倍率高かったし、面接重視みたいなので落ちました。市役所行きたかったんですけどね」

 統括の目がキラリと光った。

(プチ解説)

 最近の若者はマニュアルがないと何もできないという話は調査に来たベテラン署員からよく聞きます。
 調査に行った先の社長や税理士から文句を言われ、署に戻ってからは上司や先輩から叱られ精神を病んでいる署員も多いと聞いています。今回来た新人君には立派な調査官に成長して欲しいと願っています。
 税務調査を受けたら、その記録をすべて残しておいてください。指摘されたところは是正して、事業承継の折には必ず後継者に引き継いでください。
 次回税務調査が入ったとき、今回あるいは前回指摘されたことが是正されていないと、重加算税の対象になることもあるからです。

 9回にわたって連載してきました「税務調査なんて怖くない」は今回をもって終了させていただきます。ご愛読いただきありがとうございました。来週からは違う会員のブログが始まります。お楽しみに!

執筆者紹介 

【名前】
野口 義幸(のぐち よしゆき) 

【取得資格等】
事業承継士、中小企業診断士、1級ファイナンシャルプランニング技能士  

【自己紹介】
大手流通企業2社で、販売促進、営業、経営企画室長、総務課長を歴任。また、マネジメントゲームとパソコンを活用したセミナーの講師として延べ2,000人以上の経営管理者教育を実施。現在は都内の会計事務所に所属し、財務会計指導を中心に法人の経営コンサルティング、個人のライフプランニング等を行っている。また、ジャズドラマーとして定期的に都内のライブハウスに出演している。 

 

現場における事業者様への支援については、様々な進め方があります。
このブログでは個々の会員の体験に基づいたお話をお伝えしております。